聖霊降臨祭（ペンテコステ）礼拝証詞 　　2020年5月31日 　渋谷日本基督会
　　　　　　　　　　　　（リモート）

　聖霊降臨の事実　　　　　　　 　　　　　細田 篤志
　　　　聖書　使徒行伝 二章1～28節

　主の復活から五十日目の五旬祭（ペンテコステ、ギリシャ語で「第五十」の意）の日に、使徒達を含めて百二十人程の人たちに聖霊が降ったという使徒行伝二章の記述は、いつ読んでも私の心を打つ。「使徒行伝」は、別名「聖霊行伝」とも云われ、主が十字架につかれたとき、主を捨てて逃げ去った弟子たちがその後聖霊の賜物を受けて、霊に満たされて別人のように大胆に福音を宣べ伝え、その福音がユダヤを越えて全世界へと広がって行く様子がいきいきと描かれている。

使徒たちが集まって祈っていたとき、激しい風の吹くような大音響と共に、「舌（γλῶσσαグロッサ）」のようなものが炎のように分かれて現れて、一人一人の上にとどまり、彼等は「霊」が語らせるままに様々な国の「言葉（＝舌）」を語った。風、大音響、炎は旧約聖書では神の顕現を表す現象である。そして彼等が霊に満たされて相手の国語で語る言葉（舌）は、「新しきことを語る言葉（舌）」（マルコ十六・17）であった。集まった人々の国語は異なっていたが、「霊の言葉」によって福音を理解できたのである。

　ペテロは、この不思議な光景を見た人たちが、「新しい酒に酔っている」と云ったことに反論して、これはヨエルの聖霊降臨の預言（口語訳ヨエル書二章28～32節））の成就を示すものであると証しした。ヨエル書は、末の日（days複数）にすべての人に神の霊が注がれて、人々は預言者のように幻や夢を見たり、預言する（神の意を知り、霊の言葉を語る）ようになることを預言したものである。聖霊降臨の事実は、旧約聖書のヨエルの聖霊降臨の預言や続く25節からのダビデの詩篇十六篇の主の苦難と復活の預言が成就しただけではなく、新約聖書の洗礼者ヨハネの預言「彼は聖き霊即ち火にてバプテズマし給うべし」（ルカ三・16）やイエス様の約束「汝等久しからずして聖き霊にてバプテズマせらるべし」（ルカ二四・49、使徒一・5）の成就でもあった。

　ヨエルは、さらに末の日には「すべて主の名を呼び頼まん者は救わるべし」と預言している。「名」は、そのものの実体や人格を表し、「名を呼び頼む」は、「名を称えて助けを求める」の意で、「主の名を呼び頼む者」は、イエスを救い主であると信じる者を表す。パウロは「聖き霊に在るにあらざれば、誰もイエスを主ということ能わざる」（コリント前書十二・3）と証ししているが、私たちにとっての聖霊降臨＝主の霊を注がれる＝は、イエスを私たちが「救い主」と信じて告白することに他ならない。上からの、主からの霊を注がれた者でなければ、誰も心の底から、「イエスよ、汝は真に主におわします」と告白できないからである。

　使徒たちに聖霊が降臨して二千年以上が経つ。しかし「イエスは誰か」を私たちが問い続けて、「主イエスよ、汝は真にキリスト、真の神におわす」との告白ができたなら、その時私たちにも二千年前に使徒たちに降ったのと同じ聖霊が降臨したのであり、私たちにも聖書の預言が成就したのである。